最低賃金が上昇する中で、残業手当や深夜勤務手当、休日出勤手当などの割増賃金も増加しています。
特に、月60時間を超える残業には50%以上の割増率で支給が必要であり、法定休日に働いた場合の休日出勤手当は35%以上の割増率が求められています。
しかし、割増賃金を計算する際にその基礎となる給与や手当には何が含まれるのか、よく確認しておくことが重要です。
「割増賃金の基礎となる賃金」から除外できる項目は法律で明確に規定されています。
具体的には以下のような手当が除外対象です:
家族手当
通勤手当
別居手当
子女教育手当
住宅手当
臨時に支払われた賃金
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
ただし、これらの名称が単に該当していれば対象外となるわけではなく、実際の運用ルールや対象範囲が重要です。
詳細については労働基準監督署などで相談することをおすすめします。
また、就業規則に記載された給与のルールが、実態に即して運用されているか、法律に違反していないかを確認することも大切です。
こうした確認作業は、会社側の信頼性を高め、従業員とのトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
2000年代初頭、小売・飲食・サービス業を中心に「役職手当は割増賃金の基礎賃金に含まれるのか?」という議論が盛り上がったことがあります。
一部の会社では、「店長やフロア長などの役職者は管理監督者に該当するため、役職手当を支払えば割増賃金に含める必要がない」と説明していました。
しかし、法律が定義する管理監督者とは、簡単に言えば「社長」や「常勤役員」といった立場の人を指します。
一般的な「部長」や「課長」は、この定義に当てはまらない場合が多く、残業手当の支払い義務が発生します。
役職手当の金額が実際の残業手当相当額よりも十分に多い場合は別として、多くの中小企業では、店長やフロア長の役職手当がそれほど高額ではないのが現状です。
そのため、役職手当も割増賃金の基礎賃金に組み込んだ上で、法律に基づいた残業手当、休日出勤手当、深夜勤務手当を支給することが望ましいです。
割増賃金の計算や支払いルールを明確化し、法律を遵守することは、従業員との信頼関係を築く大きな一歩です。
適正な対応が従業員のモチベーション向上や離職率低下につながり、結果として企業の成長を支える基盤となります。